KENWOOD チューナー L-02T

世界最高の低歪率と高SN比を開発テーマに、新技術であるノンスペクトラムIFシステムやノンステップ・サンプリングホールドMPXなどにより長年の課題であった受信特性とオーディオ特性の両立を実現した最高級FMステレオチューナー。

新開発のノンスペクトラムIFシステムは、IFに入る信号からFMスペクトルを取り除き、IFフィルターを通って妨害信号を除去した後で、もとのFM信号に戻して検波する構造となっています。これにより、WIDEバンドでも高選択度を持ちながら低歪率を実現しています。

FM放送の原理はオーディオ信号によってキャリアの周波数を変化させる周波数変調を用いています。この時に変調されたFM信号は、オーディオ信号の強弱や周波数成分により、常に帯域幅、レベルの変化するスペクトルとして情報を伝えます。しかしFMチューナーでは目的の局だけを受信するために、IFバンドパスフィルターによって選択度特性を得ます。この時に従来のIFシステムは、このスペクトルをもったFM信号をそのままIFのバンドパスフィルターに通していたため、かなりのレベルの歪を発生させていました。ノンスペクトラムIFシステムは、FMスペクトルを取り除いた信号をIFバンドパスフィルターに通しているため、優れた妨害排除能力を維持したまま、歪を殆ど発生させません。

回路動作は、VCO(電圧制御発振器)で、受信したFM放送と全く同じ偏移を持つ6.2MHz信号を発振し、第一ミキサー(減算ミキサー)で「入力信号-VCO発振信号=ノンスペクトラムIF信号」となるように、FM信号のFM偏移を取り除きます。このため、バンドパスフィルターにはFM偏移の無いノンスペクトル信号が通過することになり、歪を発生させずに十分な選択度特性を確保しています。そして、第二ミキサー(加算ミキサー)で再びFM偏移を持つVCO信号を加え、復調回路に導かれています。

サンプリングホールドMPXをベースに、さらに完成度を高め、位相特性の改善や歪の低減に成功したノンステップ・サンプリングホールドMPXを搭載しています。
従来のサンプリングホールドMPXでは、復調出力から38kHzのサブキャリ成分を打ち消すためにローパスフィルターを使用していましたが、38kHzの周波数はオーディオ帯域の上限20kHzに近く、どんなによく設計されたフィルターでも音質・特性に影響を与えていました。
これを改善するため、ノンステップ・サンプリングホールドMPXでは、波形の組み合わせや合成・積分することによって38kHzのサブキャリア成分を除去する方法を採用しており、復調出力はオーディオ信号そのものとなっています。このためローパスフィルターは実用上不要としています。
また、L-02TではローパスフィルターのON-OFFスイッチを採用しており、測定などの特殊な使い方をするときにはローパスフィルターを使用することができます。ローパスフィルターON時のキャリアリークは約70dBまで抑えられています。

入力信号をRF増幅部を通さずにミキサー段へ直接インプットするダイレクトコンバーションシステムを採用しています。
ダイレクトコンバーションシステムはトリプルチューニングとミキサーそしてIFアンプ2段により構成されています。ミキサーはペア選別されたJ-FETを使用したバランスドタイプ、後段のIFアンプも同じFETを用いたプッシュプルアンプとすることで十分に広いダイナミックレンジを確保し、IF段でのIM歪の発生を抑えています。
Sメーターが60dBf以上を示す地域ならダイレクトポジションで受信が可能です。

RFセレクターを採用しています。
十分な入力のある場合や、近接した大出力の局がある場合にはダイレクトコンバーション・ポジションで、また入力が小さい場合には高感度のノーマルポジションでと使い分けが可能です。ノーマルポジションはエアギャップの広い周波数直線高精度7連バリコンをシングル-シングル-トリプルチューンで構成しています。
RFアンプにはパワーゲインが大きくダイナミックレンジの広いDD-MOS型FETと、第3混変調歪を大幅に減少した高GmのJ-FETを使用しています。さらにトリプルチューンの3段目の出力は低インピーダンスで次段(バランスドミキサー)へつないでおり、インピーダンスマッチングを考慮した設計となっています。また、局部発振回路とバリコンを一体化し、バリコンの回転角度に合わせて目盛精度を改善し、さらに立体配線でブロック化して温度や湿度の変化による周波数ドリフトを少なく抑えています。

ノーマルポジションでも広いダイナミックレンジを確保するために、フロントエンドIF・AGCを搭載しています。
この回路はクリッピングをするような大入力のときにだけ働き、ノーマルポジション時にも歪の発生を抑えています。

ミキサー以後のフロントエンドIF段は、全てプッシュプル構成とすることで優れたダイナミックレンジを得ています。

電源部は、L-01Tで採用された局部発振回路の電源分離の考え方をさらに発展させ、各動作ステージごとに独立した電源を設置しています。そのため電源トランスは計6巻線の2トランス構成となっています。
特にフロントエンドを独立電源としたため、他ステージからの電源を介した影響はありません。また、MPX部は3電源、左右分離後は完全左右独立2電源となっています。

シグナルメーター回路は専用のIF増幅回路と対数増幅器で構成されています。
アンテナ入力に比例した最大目盛110dBfの等間隔目盛で、正確な入力電力を知る事ができ、電界強度計としても使用可能です。

より精確なチューニング動作ができるよう、ダイヤルスケール板を左右に2mmずつ動かせるアジャスターを設置しています。

2系統の切換式アンテナ端子を搭載しています。

出力部にはΣドライブ・サーキットを搭載しています。
チューナーとプリアンプのトランスの一次側はACコードにより結合されていて、二次側は静電結合や電磁結合によって交流的に結合されていることになります。そのためチューナーとプリアンプ間では大きなループが形成され、相互の電源の影響により歪んだ電流がプリアンプに流れることになります。
これを改善するため、L-02Tの出力にはΣドライブ方式を採用しています。一本のグランドケーブルが歪電流のバイパス的な役目を果しているため、インピーダンスの高いケーブルを使っても、歪の無い信号電圧だけをプリアンプに伝えるとともに、新IF回路やMPX回路で得られた高品質な音をプリアンプの入力端子まで伝送可能です。

Σドライブ・サーキット用 専用ケーブル、取扱説明書コピー 簡易アンテナ 付属